本委員会では建築について「学び」をメタファにして考える。それは単に大学等での学びだけでなく生涯学習や実務における研修、市民による学びなどを含む。また「学び」を通じて社会の変化に対する建築の実態と課題を明らかにするとともに、社会の変化に対する実態と課題を明らかにする装置としての建築の役割を広く伝えていくことに取り組む。
以上の全体コンセプトをもとに、以下の編集方針を定めたい。
オリンピック・パラリンピック東京大会の開催される2020年を1964年と比較すると2018-19年は開催前夜の1962-63年と比較されるかもしれない。1964年には人口の増大と大都市への一極集中への対処が議論されていたが、今なら急激な高齢化と少子化で人口の減少と地方や郊外での拡散が議論される。
1964年以後の日本では東京への集中投資が続き超高層や都市再開発による巨大建築への展開が進む一方「国土の均衡ある発展」が議論されのちの『列島改造論』へと続いた。2020年以後においても国内外での都市間競争のなかで建築も役割を見出すかもしれないし、建設業全体は空き家の除却やインフラの輸出について本格的に取り組むようになるかもしれない。
本委員会では、このような歴史的視点をもとにポストオリンピックの日本における建築の行方を占う。
日本建築学会は会員規模が大きく、また読者の専門が広範囲にわたっているということもあり会誌の特集はいずれの話題も「話題が偏っている」「興味を引く話題が少ない」という評価を引き寄せてしまいやすい。そこで本委員会では五十嵐太郎委員会(2008-2009)が行っていたように毎号の特集を原則2本立てとすることで大特集主義を解体し、話題を分散させ、より多くの読者の関心に重ねやすくすることとしたい。
過去20年間の編集委員会の目次一覧を概観すると、(1)社会的な話題を扱うもの (2)建築デザインに関するもの (3)専門(構造・材料・環境・都市・防災等)に関するものが概ね1/3ずつ扱われているようである。本委員会においても第1特集においてはそれに倣い、各分野の議論をリサーチし、広範なトピックをバランスよく扱うことで会員相互の議論のプラットフォームとしての会誌の役割を果たす。
第2特集はできるだけ萌芽的、実験的なトピックを扱う。編集委員が当事者意識を大事にしながらそれぞれの関心や興味を持つ話題を生々しく扱い、歴史的視点や分野横断的視点によって多世代・異分野を巻き込むような編集を行う。
近過去の会誌の連載企画に着目し、かつての名物コーナーである「技術ノート」を復活させることなどで会員相互の交流に役立てる。また、現役の大学院生や若手の社会人が参加するようなコーナーを設け、20-30代会員の増強に寄与する。
委員長 藤村龍至(文責)
幹 事 門脇耕三 豊川斎赫 深尾精一 満田衛資 山崎泰寛