表紙アートワーク 渡邉翔
2024-12月号 DECEMBER
特集12 駅のドラマトゥルギー
降旗康男監督、高倉健主演の映画「駅 STATION」では、複数の時間の物語がオムニバスで描かれ、かつて親しい間柄で駅を通過していた2 人が、次の物語の時間では別々の生活を送ります。そして、ふと、駅で交差する。けれど、空間と時間が交わるのみで人間の生活は離れたまま描かれます。
駅は移動の結節点であり、同時に人や物が偶然に交わる交錯点でもあります。誰しも1つくらいは駅での思い出があることでしょう。人が出会い、別れ、泣き、笑う場所ではさまざまな物語が生まれてきたでしょうし、小説・映画・歌謡曲の舞台ともなってきました。「都市」がドラマを生み出す場であることは間違いないですが、最も作劇性のある単体の建築となると「駅」があがるのではないでしょうか。
「駅」というところは本来「つかいかた」が固定されない場所の集まりなように思います。けれど最近の都市空間はどこもかしこも「つかいかた」が決まってきてしまっていて、巨大化する一方で窮屈に感じるようにもなってきました。本特集では「駅」がかかえる空間について、そこがどれくらい都市の偶発性のようにドラマが起こりうる場である/あったかを、いくつかの角度から明るみに出すことを試みました。
いま、駅はドラマ性をもちえているか。もちえているとしたらそれはどのような舞台なのか。都市の余白、ナラティブな器として、駅の空間性に着目します。
[目次] |
0 | 巻頭連載 建築アーカイブの現在⑫ アッサムベンガル鉄道アーカイブ |
2 | 特集 駅のドラマトゥルギー |
4 | 対談 駅の空間人類学 伊藤毅、今福龍太 |
10 | 論考1 鉄道駅の空間史 大内田史郎 |
14 | 論考2 見えない駅―終着的幻想から乗換的世界へ 津久井五月 |
18 | 座談会 駅が抱える空間―にぎわいと余白 岸井隆幸、芝田義治、陸鐘驍 |
24 | 論考3 劇場型工事と駅 真壁智治 |
26 | 論考4 空港ターミナル―空と大地の間で 岡部憲明 |
28 | インタビュー1 モビリティハブという小さな場所 齊藤せつな、佐藤和貴子 |
30 | 論考5 駅のドラマトゥルギー ―都市の速度の変換点をめぐって 吉見俊哉 |
34 | 一宮団地 宇多津団地 川尻大介、岸佑、小南弘季、田上健一、朴光賢、堀田典裕 |
38 | 「ドラマ」なき大空間建築 小澤雄樹 |