表紙アートワーク REFLECTA, Inc.
表紙写真 System of Culture

2026-6月号 JUNE

特集= 06 〈外側〉を見出す力

─郊外・廃墟・バックヤード
06 Finding“Outside”: Suburb, Ruin, and Backyard

 

特集06 〈外側〉を見出す力―郊外・廃墟・バックヤード

今号の特集は「〈外側〉を見出す力」。少し変わったタイトルである。
20世紀後半に差し掛かり、近代建築や近代都市計画が成熟してきたころ、当時の人びとが考えてきた世界の〈外側〉が次々と発見されたことはよく知られている。バーナード・ルドルフスキーの「建築家なしの建築」(1964)は、建築家たちの議論の埒外にあった「無名の人びとの手による建築」を、さまざまな地方化(マージナライズ)された場所のフィールドワークによって採集してみせた。さまざまなデザイン・サーヴェイや集落調査は、建築家たちの思考の〈外側〉からのインスピレーションをつねにもたらしてきた。あるいは、同時期に世界的に顕在化した環境問題は、都市計画分野ではニュー・アーバニズムなどの新しい運動へ展開していった。そこでは、大量生産・大量消費の世界の〈外側〉にある大量採取・大量廃棄の世界が明確に意識されるだけでなく、ブラウンフィールドなどの放擲された空間も積極的な計画の対象となってきた。
たとえば「廃墟」などの「放棄された空間」を考えると、先に触れたブラウンフィールドにせよ、近代に生産された空間が「余剰化」してしまった現在、それらをどう使いこなすかが鍵となる。そこでは、必ずしも「完成された」「完璧な」空間ではない、漸進的に生産される空間を使って活動を続ける可能性も現れつつある。あるいは〈外側〉は私たちの社会の内側にも見出せる。たとえば「郊外」は、建築や都市の分野ですでに語りつくされて久しいように思われるが、果たしてそうだろうか? 考えてみると、「郊外」とは都市とも農山村とも違う、補集合的な対象(外側)である。都市の経済から離れ、開発圧力は弱いが、それでも都市へのアクセスは確保されている。そこには、市場の強力な力が及ばないからこそできる計画の可能性がある。
東日本大震災の直後、東北を考えることが逆に東京を考えることにつながるのだという取り組みがあった。東北が歴史的にいかに東京に奉仕してきたか・させられてきたかを考えることは、東京を見ているのでは見えてこない東京を浮き彫りにする。同じようにして、私たちの〈外側〉から、私たち自身が照射されて見えるものがあるはずだ。そしてその〈外側〉は無数にある。この特集は、そうした〈外側〉を「見出す力」を、計画にとってもっとも創造的な部分のひとつとして取り上げ、また同時に思索を進め、議論のきっかけとしたい。

[目次]

00巻頭連載
〈外側〉と都市計画

02

特集 〈外側〉を見出す力─郊外・廃墟・バックヤード

03インタビュー1
外側はどのように見出されるのか
─都市をめぐる思考の射程
若林幹夫
08論考1
拡散する生活域の実態から再考する「間にある都市」
村山顕人
12論考2
廃墟とフロンティア─〈外側〉の都市論へのイントロダクション
吉江俊
16論考3
インクリメンタルな場としての郊外を捉え直す
宮原真美子
18インタビュー2
"PEACEFUL CHAOS"なエリア開発
─地域に根付き、場や関係を育てるデベロッパー
工藤英之
22論考4
「負動産」の外側へ
─横須賀市月見台住宅の実践から
福田和則
24論考5取材
海老名芸術高速
─郊外の透明性
涌井智仁、石毛健太 案内:井上岳、赤塚健
26論考5
梱包と開封
井上岳
28論考6取材
図図倉庫
─終わりなき場づくり
矢野淳、佐藤研吾
30論考6
不断の可能性
─福島県飯舘村「図図倉庫」の実践
佐藤研吾
32論考7
郊外鉄骨小史
谷繁玲央
34インタビュー3
肥大化した建築が解体され、〈エピソードゼロ〉が現れる
─水上温泉街の「廃墟の上棟」
横瀬寛隆、神本豊秋、永野真義
38インタビュー4
神戸の山際に広がる「バイソン」と、廃屋流通の実践
西村周治
40論考8
「外側」をめぐる制作/「弱い内側」に立ち続けること
伊藤維

復興のリアリティーズ:06
42鯉のぼりの下に
田上省治、田上美幸

ノードとしての建築展:06
44日本建築学会主催建築展覧会(1927-1942)
─戦時体制下の揺れ動く建築界を映すもの
宮下羽未

越境の現場を巡る:04
46外国人技能実習生と地域住民をつなぐ共生の場づくり
─わくせいプロジェクト
阿部航太、児玉美香

ものづくりの過去と現代:06
48「動き出す自邸」の玄関建具について
辻琢磨