表紙アートワーク 渡邉翔
2025-1月号 JANUARY
特集01 阪神・淡路大震災30年
2025年1月で阪神・淡路大震災30年が経過する。この間に、複数の地震災害、大規模水害などの自然災害があり、さらに東日本大震災という巨大災害を経験した。それでもなお、阪神・淡路大震災の被害とそこからの復興過程が建築・都市分野に与えた影響は計り知れない。戦後の日本社会において、高度成長期を経て、発展し形成されてきた建築物や都市構造が広範囲に一瞬にして破壊され、機能停止し、多くの人々の生活を一変させ、またその後の建築・都市空間再建がもたらす課題・困難は、単なる物理的事象にとどまるものではなく、建築・都市が社会との関係で成り立っていることを、われわれに現実として突きつけた。しかし、30年という年月が経過した現在、社会の一線であの現象を経験し携わってきた世代から次の世代、さらに次の次の世代に移行している。『建築雑誌』でもこの30年の間に災害・防災を幾度となくテーマにしてきたが、次なる被災地(未災地)の被害軽減を目指すうえで、今回が阪神・淡路大震災を留める最後の機会なのかもしれない。阪神・淡路大震災の経験が見据える先を、この30年の振り返りとともに示したい。
[目次] |
0 | 巻頭連載 建築アーカイブの現在⑬ 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 デジタルミュージアム準備室 |
2 | 年頭所感 子育てをしたくなる建築・まち・地域 竹内徹 |
4 | 特集 阪神・淡路大震災30年 |
6 | 座談会1 国土計画・都市計画としての防災―阪神・淡路大震災の足跡 伊藤滋、室﨑益輝 |
12 | 座談会2 若い世代から見た阪神・淡路大震災 ─継承すべきもの、更新すべきもの 栗山尚子、杉野未奈、大津山堅介、須沢栞、前田昌弘 |
20 | 取材1 「足もと」から見た復興の現在 平山洋介 |
21 | 取材2 全面事業の細かな手法 牧紀男 |
22 | 取材3 個々の建築と集合したまちの復興 森崎輝行 |
23 | 取材4 密集市街地の復興と、まちづくり支援 松原永季 |
24 | 取材5 暮らし方と緑の行方 小浦久子 |
25 | 取材6 市役所からみた復興の風景 青木利博 |
26 | 取材(コラム) 新都市が目指した姿 越山健治 |
27 | 追悼文 小林郁雄氏を悼む |
28 | 論考1 兵庫県南部地震以降の建築耐震化の流れ 楠浩一 |
30 | 論考2 インフラ・ライフライン防災 鍬田泰子 |
32 | 論考3 災害発生後の建物レベルのデータ作成とその活用 浦川豪 |
34 | 論考4 阪神・淡路大震災30 年と居住環境復興 ―増分型適応から変革的適応への転換を 近藤民代 |
36 | 論考5 ヘリテージマネージャーの成立と展開 中尾嘉孝 |
38 | 論考6 「スペクタクル」に回収されない 災害アーカイブの構築は可能か ―阪神・淡路大震災の「分有」を掲げた2つの展示実践の検討 高森順子 |
40 | 伊藤公文 |
44 | ―DOCOMOMO Japan 選定建築物を巡って⑥ ヴィラ・クゥクゥ 鈴木京香 |
48 | 構造デザインの可能性を切り開いた 金箱温春 |