表紙アートワーク 渡邉翔

2025-4月号 APRIL

特集= 04 REgionalism in 名古屋


04 REgionalism in Nagoya

 

特集04 REgionalism in 名古屋

コンピュータがもたらす利便性と効率性の追求は、現代都市を再び「ツリー構造」に戻すという危惧の下に、シャノン・マターン(Shannon Mattern)は「接ぎ木」という概念について論じた(*1)。
都市や建築が持続的に発展するためには、既存の物理的環境と文化的環境について、「再=RE」を付けて考える必要があろう。
具体的な場所に対して、再読、再編、再考、再生、再興、再建などの「再=RE」を付けて考えられた内容は、その場所の背景に応じて多様で固有の手法を持つ(*2)。今期建築雑誌編集委員会では、福岡・名古屋・仙台を取り上げて、"REgionalism"を冠する3冊の特集号を準備しており、本特集"Regionalism in 名古屋"は、2024年8月号に続く第2弾である。
本特集では、「大名古屋都市計画(1924)」「大中京圏再建の構想(1945)」「名古屋防災都市建設計画(1960)」と都市計画の優等生であり続けた近現代名古屋という巨大な「地方都市」とその「地方都市圏」について、日常生活の「接ぎ木」のあり方について再考しようとするものである。『建築雑誌』2025年4月号では、通巻140巻 創刊1800号の節目に、名古屋を題材として近現代における「地方」に固有の場所のあり方について考えたいと思う。

*1 Shannon Mattern, A City is not a Computer, Princeton, 2021.(依田光江訳『スマートシティはなぜ失敗するのか』早川書房、2024/10)
*2 "region"の語源は、ラテン語の「方向」や「境界」を意味する"regio"であり、印欧祖語の"reg-"という語根に由来する。"region"という単語を、大文字の"RE"と小文字の"gion"とすることは語源からすれば間違いであるが、本特集では「地方」について"再=RE"を付けて考えるために、敢えてこのように分節する。

[目次]

0巻頭連載
建築アーカイブの現在⑯
名古屋テレビ塔

2

特集 REgionalism in 名古屋

4座談会1
名古屋という「地方」において
近現代都市を再考すること
勝原基貴、堀田典裕、向口武志、村山顕人、山岸綾
10座談会2
名古屋という「地方」において
近現代建築を再考すること
大嶽清和、後藤周平、冨田正行、蜂屋景二、丸澤直靖
16インタビュー
名古屋で「テクノスケープ」を考える
片木篤
20論考1
産業都市における働く場の建築・都市デザイン
恒川和久
22論考2
焼き物のまち常滑の工場で、建築陶器をつくる
ことと、建築設計をすることと、〈建築と窯業〉
水野太史
24論考3
戦後から2028 年へ
―岐阜駅前の繊維問屋街を考える
荒木菜見子
26論考4
近代名古屋における「田舎家」
土屋和男
28論考5
高度経済成長期における
名古屋鉄道沿線の丘陵住宅地開発
岡島由莉
30論考6
人とまちを育む居場所づくり
―「まちの縁側」と錦二丁目の「会所」の再生
名畑恵
32論考7
グリーンインフラの活用による地方の再生
「いなべ市役所・にぎわいの森」
山口智三
34論考8
「ラスト・ワン・マイル」のための建築
堀田典裕
36論考9
なごや圏の活性化戦略「Co-machi 観光」について
花村元気
38論考10
久屋大通公園の持続性、久屋大通界隈の変遷
武藤隆
40論考11
海女小屋を通してみる地域性
「鳥羽の海女小屋」展レポート
大井隆弘

建築編集譚―各誌歴代編集長が語るあのころ④
42内野正樹

いま、建築は歴史から何を学ぶのか⑧
46建築と情報技術の転換期
中川純