2010-2月号 FEBRUARY

特集= 建築・有象無象


Architecture: Worlds within Worlds

 

 建築・都市を建てるのは誰か。環境を作るのは何か。それは有象無象の営みによる。
 有象無象には二つの意味がある。一つは烏合の衆である。同時にそれは森羅万象のすべてを表す広さを持ち併せているのだ。無数の人々の営為とそれによってつながる宇宙-目標とすべき「建築」の射程としては好適かつ正確な言葉ではないだろうか。
 本特集は建築を支える有象無象をさまざまな側面から照射する号とした。大きく二つによって構成される。
 一つは有象無象の今後の宇宙的展開を検討する全地球論である。具体的には60年代末期に建築・環境系の分野に大きな衝撃を与えた『ホールアース・カタログ』の編集者スチュワート・ブランドの最新著作についての紹介とその内容の検討である。概要の紹介としては、日本でもっとも早いものとなるだろう。
 もう一つは建設行為の内実を支えるべき人々の営みに焦点をあてた各論である。折しも『建築雑誌』通巻1600号目。編集委員の紹介もかねて彼らに執筆を依頼し、いま掘り起こされるべき有象無象についての16編を収録した。これによって今後二年間の委員会が進みそうなベクトルを見極めてもらえるかもしれないと願った次第である。
(編集長:中谷礼仁)


(特集担当委員:中谷礼仁、木下 光)


CONTENTS

"WE ARE AS GODS AND HAVE TO GET GOOD AT IT"/Stewart Brand 表紙 & 001
特集主旨/中谷礼仁 004

◆鼎談        
 CatalogからDisciplineへ
 ─StewartBrandの展開を通して「全地球」を展望する   
 月尾嘉男・糸長浩司・日埜直彦 005

連載
日記のなかの建築家たち 第2回 鹿島出版会の頃/中村敏男 012
オン・サイト
『地域雑誌 谷中・根津・千駄木』終刊 1984-2009/山岸 剛 014

◆有象無象16編/中谷礼仁 016

セクション1:かたちになりゆくモノへ
01 1960年代、アメリカ建築の多様と対立/中村敏男 016
02 凧の糸―山本学治の骨太建築論から学ぶこと/陶器浩一 018
03 物語と保存―太田博太郎の建築史学/清水重敦 019
04 概念としての「建造物」/山岸 剛 020

セクション2:有名性からのジャンプ
05 The Dis-appearance of Narrative/Tom Heneghan 021
06 後年の康 炳基―都市計画からマウルマンドゥルギへの転身/饗庭 伸 022
07 現在主義者としての村野藤吾/勝矢武之 023
08 広瀬鎌二―ハイテクデザインへの道からの離脱/内田祥士 024

セクション3:包括概念としての建築
09 環境概念の発明者―知の巨人・浅田孝/木下 光 025
10 環境共創造体・CAT論/糸長浩司 026
11 国境のトランペッター―戦争を火種のうちに消すという意志「伊勢崎賢治」/マエキタミヤコ 027
12 F.D.ルーズベルトにおける文化政策観―ニューディール政策が芸術活動にもたらしたもの/山口俊浩 028

セクション4:日常にひそむ形
13 バーナード・ルドフスキーの足跡/林 憲吾 029
14 地下足袋を履いた活動家/岸本 耕 030
15 遺留品研究所・デザインサーベイの到達点/真壁智治 031
16 Z型ブロック工法を巡って―坂 静雄博士の試み/西澤英和 032

連載
The Long Distance Chat
Physical and Emotional Revitalizing―25 years after the Bhopal disaster in India/Moulshri Joshi×白 孝卿 033

編集後記/中谷礼仁、木下 光 034