2010-3月号 MARCH

特集= ナイーブアーキテクチャー


Naive Architecture from Cutting-edge Japan

 

 本号は委員による編集担当制が始まった初めての号である。全委員から提案された多くの企画のタイトルから「ナイーブアーキテクチャー」という名前がふと目にとまった。「新しい」というよりもなにか「懐かしい」感じがしたからである。この懐かしさという感覚は何なのだろう。それが気になった。
 提案者である真壁智治氏に詳細をたずねると、きわめて繊細なつくりかたをされる最近の建築作品の潮流をさした言葉とのこと。またそれら多くがつくり手と体験者との間に感覚の共有の地平が生み出されているとのこと。それらを聞いて微妙な知覚的課題が包み込まれているように思えた。このナイーブアーキテクチャーを言挙げすることは、まさにその言いがたさをとらえることが必要であった。
 今回の特集は、大きく三つの部によって構成されている。まずナイーブアーキテクチャーの射程をめぐるイントロダクションである。続く第一部ではそのイントロダクションにおけるさまざまな吟味を経たうえで、その手法論が展開される。最後の第二部では、つくり手と使い手との間に介在する本質的な体験を主題として、その分析が行われている。

(編集長:中谷礼仁)

(特集担当委員:真壁智治、勝矢武之、柴原聡子)


CONTENTS

連載
日記のなかの建築家たち 第3回 『a+u』の誕生/中村敏男 004

◆イントロダクション
特集主旨/中谷礼仁 006
主題解説・インタビュー
ナイーブアーキテクチャーの根拠を探る/真壁智治 007
対談 ナイーブアーキテクチャーのキュレーション/妹島和世×小池一子 013

◆第一部
第一部主旨/勝矢武之 020
インタビュー 手法としての抽象化/青木 淳 021
論考 合意形成の二つのモデルとその設計可能性について/斎藤 環 026
論考 Less is the New More / Naomi Pollock 028
論考 ささやく建築─抽象化と徴候性/勝矢武之 030

連載
オン・サイト 大辻邸(上原通りの住宅)設計:篠原一男/山岸 剛 032

◆第二部
第二部主旨/柴原聡子 034
対談 詩のように応答される建築/塚本由晴×小池昌代 035
論考 セーターと毛糸玉/中山英之 042
インタビュー
大辻邸(上原通りの住宅、1976)インタビュー/大辻誠子 044
論考 みつめる建築─女性性と身体性/柴原聡子 046

◆編集後記
新たな公共性を開くナイーブアーキテクチャーへ/真壁智治 048
連載
The Long Distance Chat
都市の貧困─ダカール・ジャカルタ/林 玲子×林 憲吾 049
特集を読んで(2010年1月号[特集=検証・三菱一號館再現]) 050
 10年後の再特集を期待する/岸田省吾
 この議論に関わるべきなのか?/山岸常人