2010-12月号 DECEMBER

特集= 平城遷都1300年考


On the 1300th Anniversary of Nara Capital

 

 人、時代が変われど、大地には私たちの活動の痕跡が刻まれ、もはや消えることはない。奈良は今、平城京遷都1300年で沸き立っている。このようなイベントを単に一過性のものとして扱うのではなく、都市を更新する祝祭としていったいどのようなインパクトを大地に与えうるのか、この問いがこの特集の新しさである。一大絵巻にようこそ。編集担当は清水重敦委員、金 玟淑委員、市川智子委員、後見人を内田祥士幹事とした。(編集長:中谷礼仁)

 

1300年という長すぎる時間

 平城京への遷都から1300年の節目を迎えた奈良は、古代ブームに沸いている。平城宮第一次大極殿の復元、そして平城遷都1300年祭の開催は、国家形成期の首都の様相を再認識させる仕掛けといえ、これを契機に古代建築のさらなる復元も企画されている。 そもそも1300年という時間は、都市においていかなる意味を持つものなのだろうか。 現在の奈良における古代ブームは、1300年前という時点への回帰を強く意識するものである。いわば都市の歴史の切断的なとらえ方といえる。都市における歴史の節目を意識するこの見方は、都市の起源への回帰や、新たなものへの希求をともなって、記念建築物を生む契機になり、都市の推進力の一環を担ってきた。大極殿の復元も、特別史跡平城宮跡における計画的な遺跡整備の一環として実施されたものであるが、大きく見ればこうした都市におけるアニバーサリーへの意識に関連して実現したという面もあろう。 ただ一方で、寺社や奈良町の例を引くまでもなく、奈良の1300年間には平城京以降の歴史も折り重なっている。平城京域の多くは廃都後に水田と化したため、その後の歴史は存在しないかに見られがちであるが、水田の畦には平城京の条坊が今でも刻印されているし、水田自体にも、単一ではないいくつもの層が重なり合っている。そこには持続的に変容し続けてきた1300年の長いタイムスパンがある。 都市における1000年を超える時間は、原点回帰へと結びつきやすい一方で、持続的変容の過程としてとらえるにはあまりに長い。しかし、今の都市景観には、紛れもなくこの長い時間が重層して刻まれている。都市の歴史のこうした対照的なとらえ方を、持続可能な都市のあり方にいかに還元すべきか。本特集では、平城遷都1300年という、歴史の節目が意識された歴史都市奈良の今を軸に、都市において歴史的時間が有する意味を、切断と持続両面を対比させることで問い直していきたい。

(清水重敦)

 

(特集担当委員:清水重敦、金 玟淑、市川智子)

 

CONTENTS

図解 平城京九相図/市川智子 001
特集イントロダクション 中谷礼仁 012
特集主旨 1300年という長すぎる時間/清水重敦 012

第一部
鼎談   古代建築の復元と平城遷都1300年祭/渡邉定夫×杉本洋文×清水重敦 014
論考① 1000年を超える時間/木下直之 022
論考② 奈良/Dreamlands/日埜直彦 024
論考③ ハノイ建都1000年祭とベトナム都市史研究/上野邦一 026
論考④ 庚戌国恥100年を迎えたソウルにおける建造物の復元と修復/禹 東善 028

第二部
鼎談   都市景観における古代 復元から持続可能性へ/斎藤英俊×宗田好史×宮城俊作 030
論考① 都市の持続的変容について──ローマと奈良/田中 純 038
論考② 中東・イスラーム世界における都市の変容:シリア・ダマスクス/新井勇治 040
論考③ 列壁都市論:モノとトキの組成/青井哲人 042

編集後記 044
1300年の重層/清水重敦
大極殿復元が残したもの/金 玟淑
色と風土の一考察/市川智子

 

連載

The Long Distance Chat
中近東熱のゆくえ/トッド・リース×太田佳代子 045

日記のなかの建築家たち
第12回 ロサンゼルスの建築家たち/中村敏男 046

オン・サイト
千葉県鴨川市、2010年10月26日、火曜日、13時/山岸 剛 048

特集を読んで(2010年10月号[特集=構造者の格律]) 050
「純粋理性」の再認識について/新谷眞人
建築士の格律について/内田祥哉