2011-5月号 MAY

特集= 建築学会の国際化 ゼロ・サーヴェイ


AIJ and Internationalization: "Zero Survey" Data Observations

 

特集主旨
建築国際化の今をあぶりだす

 2011年3月11日、巨大震災が東日本を襲いました。回復に向けての前途は多難です。この国際化特集は、それ以前から約半年の準備をかけてまとめたものです。国の際に立っているすべての学会員(定義は後述)にアンケートを実施しました。結果を読むかぎり、日本建築学会はその潜在力を期待されています。期待に沿えるよう今号をお送りします。(編集長:中谷礼仁)

 5月号では建築学会というプラットフォームから建築の国際化の今に光を当てる。現在進行する国際化を建築の現場で実際に体験している学会員は「国境を越えた交流」をどのようにとらえているのだろうか。私たちは外国籍の学会員(日本に帰化した方も含む)・海外在住の日本人会員1,033名にアンケートをお願いして日本の建築および建築学会の国際化の基点測定(ゼロ・サーヴェイ)を試みた。
 本特集では「国際化とは何か」を議論するのではなく、「国境を越えた交流」を建築活動の必然ととらえて、日本の建築活動は国際的にどのような価値があると認識されているのか、将来的な可能性はどこにあるのか、どのような障害があると考えられているのかアンケートを通して問いかけた。
 誌面は27国籍109名の会員から寄せられた一人ひとりの声をもとに構成されている。第一部にアンケートの自由記述の回答をほぼすべて掲載し、第二部はアンケート回答者のなかから技術・意匠・教育・コミュニティ・学会の国際化に関する論考の執筆をお願いした。第三部は日本で活動する海外出身のアンケート回答者3名と小嶋一浩先生、海外で活動する日本国籍の回答者3名と古谷誠章先生の二つのディスカッションである。異国での建築活動を選択した会員の声が読者一人ひとりの国際化への示唆となることを願っている。本特集幹事は中村敏男、担当は金玟淑、吉良森子、ジェームス・ランビアーシ、戸田穣である。
(吉良森子)

CONTENTS

東日本大震災緊急報告
1)東北地方太平洋沖地震の被害 ―東北地方の被害―
1.被害の全体像(東北支部 災害調査委員会)/田中礼治 003
2.地震動と建物被害(東北支部 災害調査委員会)/源栄正人 004
2)東北地方太平洋沖地震の地震像/八木勇治 005
3)東京を襲った長周期地震動
―新宿西口超高層ビル街からの報告―/久田嘉章 006

特集主旨 建築国際化の今をあぶりだす/吉良森子 010

第一部
会員アンケート アンケート主旨・方法・内容・結果/吉良森子 011
会員アンケート 生の声(自由記述回答) 016

第二部
論考① 日本遊学から得た集落的視座/李 桓 034
論考② 日本の技術力と国際化/金 泰延 036
論考③ 建築家はいかにして語るか/トム・ヘネガン 038
論考④ ネオリベラリズムの時代における日本の建築教育/
デイナ・バントロック 040
論考⑤ グローバル化とアジアと日本建築学会/三谷克人 042

第三部
座談会① 日本の技術と国際化/
小嶋一浩×クアドラ・カルロス×呉 東航×李 祥準 044
座談会② 日本の建築教育の国際化/
古谷誠章×山崎揚史×青島啓太×吉良森子 048

編集後記 052
国際化ストーリーズ/ジェームス・ランビアーシ
学会員の国際化ドキュメンタリー/金 玟淑
ぜひ住居変更届を!/戸田 穣

連載
The Long Distance Chat
「イスタンブルの3人の日本人」を巡って
──建築とオリエンタリズムの先にあるもの 
ジラルデッリ青木美由紀×饗庭 伸 053

日記のなかの建築家たち
第17回 すべてが建築である/中村敏男 054

オン・サイト
千葉県旭市、2011年3月16日、水曜日、16時/山岸 剛 056

特集を読んで(2011年3月号[特集=アジアアトラス]) 058
都市と建築の秩序/張 漢賢
将来展望の難しさ/佐々波秀彦