2014-3月号 MARCH
東日本大震災から3年
東日本大震災から3年が経とうとしている。人類史上にもまれな広域巨大津波災害、そしてまた、人類史上初と言ってよい、津波によってもたらされた原子力発電所のメルトダウンによる広域放射能汚染と、それを原因とした大量の超長期避難。想定外というキーワードをわれわれに突き付けたこの災害は、さまざまなレベルでわれわれに「どこまで準備したらよいのか」という選択を迫り続けている。
この災害によって、われわれが持っていた各種災害想定は大きく上方修正され、これまでに聞いたことのない死者数の予測値が次々と発表されている。こうした意味では、地震の余波はいまだにわれわれの計画の前提を揺さぶり続けているのである。だから、今回の地震は終わっていない。
しかも津波に関して言えば、例えば、防潮堤の高さをどう決めるかが津波被災地復興における初期条件を方向付けるのだが、その前提をどこに求めていいかわからなくなっているので、さまざまな要素技術を布置する地盤面をどこに設定してよいかわからない。
さらに、放射能汚染にかかわる要素技術さえ確立されていないところに、大量の避難民を抱えている避難自治体、避難先自治体の苦悩は、深刻の度を増していると言ってよい。
こうした意味で、この震災はまだ終わっていない。
そこで、この大災災害後の3年が、はたして他の災害と比べてどのような意味を持っているかを理解するためにも、あるいは今後取り組むべき課題を明確にするためにも、現時点で、これまでの歩みを整理しておく必要があるだろう。津波災害と、放射能災害を冷静に切り分けながら、今一度われわれの置かれた状況を見つめ直すことが、本特集の主旨である。
会誌編集委員会特集担当
大月敏雄(東京大学)・槻橋修(神戸大学)・福屋粧子(東北工業大学)・宮原真美子(東北大学)・小林徹平(東北大学)
[目次]
2 | 会誌編集委員会 東日本大震災から3年 |
2 | 会誌編集委員会[友渕貴之(協力)] 比較年表:復興3年の道程 |
6 | 小野田泰明×内藤廣 対談(岩手・宮城) 未曾有の3年間:復興のパースペクティブ |
12 | 竹田彰 1993年北海道南西沖地震・奥尻島の3年目─行政担当者から4年目を迎える東北に願いを込めて |
13 | 塩崎賢明 阪神・淡路大震災の復興公営住宅から学ぶもの |
14 | 牧紀男 復興元年はいつ?─雲仙普賢岳噴火災害とフクシマ |
15 | 黒野弘靖 新潟県中越地震における住宅再建と地域社会 |
16 | 饗庭伸 低平地の課題─近代復興から非営利復興へ |
18 | 中井祐 自治としての復興へ |
20 | 岩佐明彦 復興のために人々が集う場所 |
22 | 玉井洋一+菅澤容子 釜石における復興公営住宅 |
24 | 岩澤拓海 仙台平野における防災集団移転─岩沼市玉浦西地区 |
26 | 宮原真美子 地域事業体による地域材を利用した住宅再建の取組み |
28 | 神長倉豊隆×鈴木浩×武内敏英 座談会 福島原発被災は何が違うのか? |
34 | 土方吉雄 福島の抱える課題 |
36 | 日置雅晴 放射能汚染レベルの高い地域の抱える問題 |
38 | 浦部智義+芳賀沼整 福島における復興に向けた住環境づくりの考察 |
40 | 間野博 原発事故被災地における復興まちづくり |
42 | 村山武彦 除染対策と合意形成 |
44 | 江田隆三 福島県新地町・防災集団移転促進事業 |
46 | 奥村園子+能登路雅子 同潤会江古田分譲住宅 佐々木邸 |
47 | 犬塚恵介 他所者と街の専門家 大西麻貴 東京から東北に通うということ 小泉瑛一 新しいパブリックを設計する |
48 | 古谷誠章 学会として、どう復興に取り組むか? |