2014-9月号 SEPTEMBER
「ファンダメンタルズ」のテーマは建築である。建築家ではない。「ファンダメンタルズ」が追究するのは過去100年の間、各国の建築に起こった変化である。この回顧展で、建築が本来もつ豊かな可能性を発見し直したい。なぜなら今日はそれが底をついたように思えるからだ。
今年の国際ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展ディレクターに就任したレム・コールハースは、世界で最もエスタブリッシュされたこの建築イベントを180度転換するプランを打ち出した。これまで、建築界の顔見世興行よろしく著名建築家のラインナップがひとつのツカミになっていたが、それを外す。過去に焦点を当てるひとつの理由はそれだ。これまで、各国館が自由にテーマを選び、会場は百花繚乱だったが、一つのテーマに統一する。世界の建築界が一堂に会するこの稀有な機会を、建築そのもののために活用しない手はない、というわけだ。昨今、美術館も建築展を積極的に組み入れるようになった。しかしヴェネチア・ビエンナーレではすでに建築展の限界が言われていた。それはそうだ。アートは現実を暴いてくれるが、建築はどうだろう? 建築展は建築の本質をさらけ出し、見る者を覚醒させてくれているだろうか? 建築ビエンナーレを建築の本質と向き合う場に作り替えるという挑戦に、コールハースは出たのである。(太田佳代子)
[目次]
2 | 太田佳代子 ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展─ファンダメンタルな改革 |
4 | 福屋粧子 ヴェネチア・ビエンナーレ現地レポート─「ファンダメンタルズ」で問われたもの |
8 | 田根剛 建設と建築の二分化を超えて─「In the Real World」レビュー |
10 | 植田実×伊藤公文 座談 「現代建築の倉」に日本型ポストモダンの可能性を見る |
17 | 寺田真理子 日本の建築は、いかに世界や社会のなかで位置付けられてきたのか─映像作品"Inside Architecture─A Challenge to Japanese Society "から |
18 | 日埜直彦 ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展と日本館 |
21 | 篠原聡子 東京2020 への道程 |
22 | 連勇太朗 『形の合成に関するノート』クリストファー・アレグザンダー |
23 | 吉良森子 戦後社会の将来を形にした建築家エーロ・サーリネン |
24 | 濱田甚三郎 小規模・暮らしまるごと復興─陸前高田市広田町長洞集落 |
26 | 新槇照代 ビラ・モデルナ |
27 | 川勝真一 移動の再配置 小林恵吾 ワガママが住む矛盾を解消する 平辻里佳 もうひとつの家 |
28 | 会誌編集委員会 ヨーロッパ中心主義を脱するための海図 70 年代から現代へ |
030 | 材料施工委員会/本橋健司 |
032 | 構造本委員会/①緑川光正、②深井悟、③加倉井正昭 |
038 | 建築歴史・意匠委員会/杉本俊多 |
040 | 環境工学委員会/田辺新一 |
044 | 防火委員会/山田常圭 |
045 | 建築社会システム委員会/石坂公一 |
046 | 都市計画委員会/出口敦 |
048 | 建築計画委員会/菊地成朋 |
050 | 農村計画委員会/岡田知子 |
052 | 建築法制委員会/杉山義孝 |
053 | 建築教育委員会/石川孝重 |
054 | 海洋建築委員会/濱本卓司 |
055 | 情報システム技術委員会/三井和男 |
056 | 災害委員会/壁谷澤寿海 |
057 | 地球環境委員会/外岡豊 |
058 | 支援建築会議・特別委員会活動報告 |
066 | 支部活動報告 |
076 | 建築年表2013 |