2015-3月号 MARCH
特集 福島:復興の諸相
東日本大震災から4年経ち、地震・津波災害につては復興に向けての各種計画が一応整い、それをベースに計画の練り直しや計画実現のための工事が進みつつある。
しかしながら、いまだに災害が進行しているところがある。福島第一原発事故は、まだ収束しておらず、廃炉に向けた作業と汚染土の中間貯蔵施設問題も受け入れが決まったばかりであるし、放射能線量をどう測り、どう見積もり、どう予測・評価すべきかという技術的指標提示も道半ばと言える。
こうしたなか、原発長期避難者は短期的には避難元の市町村民としてとどまり続けるのか、あきらめて他市町村民となるのか、といった選択を迫られつつある。
中期的には、福島県が準備しつつある町外復興拠点とも呼ばれる復興公営住宅に仮住まいから引っ越すのか、自力で土地を見つけて家を建てるのか、あるいは避難解除に向けて線量と戦いながら地元に帰るのかという選択を迫られている。そして長期的には、中期用の居住を継続するのか、それとも、地元に戻るのかという選択を迫られている。
このように、福島では前代未聞の原発災害が現在進行中のなか、前代未聞の住替えの選択が、居住者とそれを支える行政に突き付けられ続けている。
本誌2013年1月号では「福島と建築学」を特集したが、本号では、ただ漠然と「福島」を取り扱うのではなく、原発被災地である12の地元自治体が、現時点においてどのような状況のなかで次なる復興計画を模索しつつあるのかについての諸相と、原発災害とその復興のプロセスについてまだ解決が図られなければならない建築学的事象とをとり上げ、論じることとしたい。
会誌編集委員会特集担当
井本佐保里(東京大学)、岩佐明彦(新潟大学)、浦部智義(日本大学)、大月敏雄(東京大学)、槻橋修(神戸大学)、福屋粧子(東北工業大学)、宮原真美子(日本女子大学)
[目次]
2 | 塩崎賢明 東日本大震災 復興の4年 |
5 | 会誌編集委員会 |
6 | 大月敏雄+井本佐保里 福島の原発被災復興の諸相─自治体に注目することの意味 |
8 | 双葉町 |
10 | 浪江町 |
12 | 大熊町 |
14 | 飯舘村 |
16 | 富岡町 |
18 | 葛尾村 |
20 | 楢葉町 |
22 | 南相馬市 |
24 | 川俣町 |
26 | 川内村 |
28 | 田村市 |
30 | 広野町 |
32 | 野﨑淳夫 建築物除染の現状と課題 |
36 | 浦部智義+芳賀沼整 福島県の仮設住宅を取り巻く様相 |
40 | 岩佐明彦 オートキャンプ場を転用した仮設住宅団地 |
42 | 菊地尊也 ピーター・アイゼンマン『近代建築の形式的基礎』(1963) |
43 | 植田実 祭りの衣裳?─ヴェネチア・ビエンナーレ第1回国際建築展 1980 |
44 | 長岡嶺男 長岡邸 |
45 | 鈴木さち 極端な想像から 洞口文人 東京で建築家→宮城で公務員 村部塁 土着的生活習慣と都市 |
46 | 宗政由桐 正しくない都市 |
47 | 会誌編集委員会 12自治体の復興の諸相から考える |