2016-12月号 DECEMBER
特集 グローバル時代の建築教育と研究
建築におけるグローバルな活躍とは?
本特集は、この疑問を起点とし、建築において「グローバル」という言葉が持つ意味を、共に考えていただくことを目的として企画された。
特集は3部構成となる。まず第1部では、本会の「グローバル時代を生きぬくことができる建築人の育成特別委員会」から会員各位に向け、グローバル時代を生きぬくための学会としての姿勢を発信していただくほか、計画・構造・材料・環境の分野別に世界で研究者がプレゼンスを示すために(特にこれからの活躍を期待される若手にとって)必要な視点を論じていただく。
続く第2部では、実際にグローバルに活動を展開されている6名の大学教員に寄稿とインタビューをお願いした。文科省が掲げる「グローバル人材」という言葉の意味を考える際、育成側の課題を考えるのみならず、自らが確固たる意志をもって海外に活動の場を求める当の若者の視点も欠かせない。そこで、「グローバルに働く」との題目のもと、実際に個人単位でグローバルな活動展開に成功している先達から、そのキャリアを獲得するために歩んだ道筋を体験談とともに系統立てて文書化していただいた。これらの記事は、グローバル時代を生きぬくことに意欲を持ち、これから具体的な行動へ歩みを進める会員各位に役立つものと期待している。また、そのほかに2名の海外出身の教員に寄稿とインタビューをお願いした。グローバル人材を育成するためには、海外で経験を積む機会を増やすのみでなく、日本という場自体をグローバル人材が育つ土壌に変える視点も欠かせない。そこで、両名には、日本という場が海外の方にとってグローバルと表現するに十分な環境を備えているのか、現状と課題に関して体験談を通じて発信していただく。
個人としてのみならず、所属する団体、特に大学においてグローバル展開の戦略を担う立場の会員も多くいる。そこで第3部では、教育現場におけるグローバル展開に関して、各団体の取組み姿勢や歩みに関して寄稿いただき、かつそれらの活動に対する期待を海外のカウンターパートから寄稿いただくことで、今後の教育現場における指針となる情報をまとめることを目的に構成した。
本特集が、会員各位が建築、特に教育研究におけるグローバルの意味を再考いただくきっかけとなり、新たな一歩を踏み出す際の道標となれば幸いである。
(樋山恭助)
会誌編集委員会特集担当
大岡龍三(東京大学)、一ノ瀬雅之(首都大学東京)、壁谷澤寿一(首都大学東京)、曽我和弘(鹿児島大学)、戸田穣(金沢工業大学)、樋山恭助(明治大学)、藤田香織(東京大学)、吉武舞(東京大学)
[目次]
004 | 会誌編集委員会 主旨 |
005 | 西谷章 グローバル時代を生きぬく |
008 | 松田雄二 計画系の視点から「グローバル時代」を考える |
010 | 倉田真宏 建築構造系での挑戦 |
012 | 丸山一平 今後の建築(材料)研究者についての意見 |
014 | 伊藤一秀 建築環境工学分野、特に建築環境工学アカデミアの国際化 |
016 | 山代悟 文化と言語のギャップを乗り越えるために |
018 | 高木次郎 海外留学と職務経験 |
020 | 木内俊克 東京→ニューヨーク→パリ→東京 |
022 | 松尾美和 外へ出て己を知る─学位留学から海外就職へ |
024 | 安福勝 欧州・建築物理学博士留学体験記 |
026 | 鷹野敦 フィンランドで働く |
028 | サンジェイ・パリーク グローバル化と日本の大学環境 |
030 | 尹奎英 ワタシの選択 |
032 | 菊地成朋 AUSMIPによる国際交流の継続的実践 |
034 | ブルーノ・ペーターズ AUSMIP─未来に戻る? |
036 | 一ノ瀬雅之 アジアとの教育・研究連携 |
038 | ウォン・ヌック・ヒェン 日本の学術機関および組織との有意義な協力関係 |
040 | 田中友章 国際通用性とJABEE建築系学士修士課程認定 |
表紙裏 | 八木幸二 研修と貧乏旅行の2年間 |
002 | 笠原一人 村野藤吾建築図面資料より、日本生命日比谷ビル(日生劇場) |
042 | 馬渕明子 国立西洋美術館 |
043 | 藤村龍至 なぜ建築の創造に投票が必要なのですか? |
044 | 新井信幸 復興からはじまった「つながりデザイン」 |
046 | 宮谷慶一 ガラス:『社史』(旭硝子株式会社)ほか |
047 | 野口まさ ㉓メルボルン大学ZEMCH Lab ゼロ・エネルギー・マス・カスタム 住宅研究における国際交流 |
047 | 岡村健太郎 ㉔東京大学生産技術研究所村松研究室 野蛮ギャルド建築史 |
048 | 会誌編集委員会 |