2017-3月号 MARCH

特集= 現代復興の地理学


Geography of Contemporary Disaster Restoration

 

特集 現代復興の地理学

 東日本大震災から約6年という時間の経過のなかで、被災地がいよいよ本格的に復興に向かっている段階(もしくはいまだに向かうことができない困難な段階)にある。そのような状況のなかで2016年4月には熊本地震が発生して甚大な被害がもたらされ、災害と向き合い続ける日本列島ということを私たちは再認識させられている。熊本地震では、東北や全国からの支援者が現地入りし、復旧・復興にかかるノウハウが現場に伝達されていると聞く。考えてみるとわが国では、こうした行政、企業、専門家、市民によるネットワークが復興のたびに技術伝播を伴って形成されてきた。そして、各地での災害リスクや被災状況などその土地に根差した復興が行われる。これは阪神・淡路大震災をひとつの契機とした時空間を超えた「復興ネットワーク」とも呼べるものであり、ここには「現代復興の地理学」とでも呼べる地図があるに違いない。今号では、いまだ道半ばにある東日本大震災からの復興を軸に、前後の復興とのつながりから相対的に未来を描きたい。

わが国における1976年以降の主な自然災害/大火の状況

1703-zu01.jpg

 図は、1976年の酒田大火以降に発生した主な自然災害、大火について、災害名、行政による復興計画策定の有無、地理的範囲などを記載したものである。特に1990年代以降、日本の各地域で災害が発生しており、日本全体で見ると、非常事態であることが「日常化」しているかのような状況が読み取れる。このような状況が「復興のネットワーク」を形成するひとつの大きな要因であると考えられる。ネットワークについては、次頁で時系列と併せてまとめている。一方で、災害・被害特性、地域性を反映して、被災地の特徴はそれぞれ異なるということも読み取れる。このような個別性が高い復興の現場がつながることの意味についても考える必要がある。

会誌編集委員会特集担当
中島伸(東京大学)、前田昌弘(京都大学)、小泉秀樹(東京大学)

[目次]

特集=現代復興の地理学

004会誌編集委員
・主旨
・わが国における1976年以降の主な自然災害/大火の状況
・現代復興の年代図表
008中林一樹×室﨑益輝×牧紀男×加藤孝明
復興の経験から未来を展望する
014渥美公秀×臂徹×小柳元樹×加藤航也×三上和仁
支援者から生活者へ─移住による復興
020澤田雅浩
土地に根差した災害リスクと復興のあり方─創造的復旧から見る中越・東北
022平山洋介
住まいを再生する─阪神・淡路から東北、そして熊本へ
024岩佐明彦
応急仮設住宅のカイゼン型性能向上の成果と限界
026佃悠
災害公営住宅─東日本大震災の地点
028前田昌弘
平時─非常時の関係性からみた災害時居住支援のデザイン
030林康裕
伝統構法の耐震化
032大門大朗+渥美公秀
恩送りから災害支援のネットワークを考える─ドライブスルーから「被災地のリレー」まで
034似田貝香門
災害ボランティア論
036姥浦道生×小野田泰明×末廣香織×円山琢也
東北と熊本、二つの復興のこれから─知見の共有と継承

連載

My History ⑮
表紙裏 住田昌二
 病患と自省

近現代建築資料の世界 ⑮
002戸田穣
生田勉資料より、空間について

未来にココがあってほしいから 名建築を支える名オーナーたち ⑮
042亀山紘
陶芸丸寿まるすかんけい丸(旧観慶丸商店)

これからの公共的建築のつくり方 ⑭
043清水義次
新たな都市像を描くヒントはありますか?

震災復興の転換点 ⑮
044李美沙+窪田亜矢
原発複合被災地における協働を目指して─「小高復興デザインセンター」設立1年目の取組み

研究室探訪
046安武敦子
㉙長崎大学建築計画研究室 建築計画の枠組み
046小林広英
㉚京都大学地球環境学堂人間環境設計論分野
風土に根差す建築の再生/創生

紹介 防災学術連携体
047米田雅子
防災減災・災害復興に関する学会ネットワーク

編集後記
048会誌編集委員