2017-9月号 SEPTEMBER

特集= 「図」と「字」─2

誰もが楽しむ建築のビジュアル
Texts and Images -2 Visual Communication for Architecture

 

特集 「図」と「字」─2 誰もが楽しむ建築のビジュアル

 "カシャッ" "カシャッ" 近頃、建築や展覧会やギャラリーの作品の前で、来場者がスマートフォンを掲げて楽しそうに写真や動画を撮影し、SNSに投稿する姿をよく見かけます。

 その場所に出掛けて、作品を理解したり、臨場感を味わうことだけでなく、SNSを活用して世界中の見知らぬ人とその体感を共有することが鑑賞方法の主流になりつつあります。

 このようにコミュニケーション技術の発展によって、建築についてのさまざまな映像体験が実現し、建築界は多くの関心者やファンを得ることが叶っています。

 一方、建築の価値や重要性、意図、建築家の職域・職能などをあまり深く考えず、性急な判断を専門外の人々に為されてしまう傾向に繋がってはいないでしょうか。

 本来ならば、関心者やファンが増えれば増えるほどに、専門域と社会の間で健康的に活発なコミュニケーションが確立され、専門家は創造性をより一層発揮し、専門外の人々との間に信頼が醸成され、延いては建築文化のボトムアップに繋がることが望ましいと考えます。

 建築とは未来をつくること。そこで今号では、普段、写真や映像と深く関わっている方々のご寄稿、座談会またはインタビューを通して、誰もが「建築とビジュアル」を楽しむ先の未来について、さまざまな可能性を考察します。専門外の人々が建築の価値や重要性、ビジョンを的確に深く理解する将来。専門外の人々が建築界に従事している人々を身近に感じて、協働を誘い、新たな職域を拓く展望。バランスの取れた多彩な意見が専門外からも建築界に集合する環境など。直感的な情報処理を促すビジュアルによる伝達・表現方法と専門外の人々の関心・理解喚起について考えるきっかけとなれば幸いです。

 なお、今月号は先月号(8月号)の「『図』と『字』─1 繋ぎ合わせる建築のことば」特集と連動しています。よって編集後記は、8月号と9月号の編集担当者一同での座談会というかたちを取りました。8月号と9月号を併せてお読みください。

(夏目康子)

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会誌編集委員会特集担当
飯田将平(ido)、いしまるあきこ(いしまるあきこ一級建築士事務所)、大村紋子(株式会社納屋)、高橋典之(東北大学)、夏目康子(Lepre)

[目次]

特集=「図」と「字」─2 誰もが楽しむ建築のビジュアル

004会誌編集委員
主旨
005増田玲×鷲田めるろ×中山英之
これからの建築写真の居どころ
010永瀬修
VRによる映像体験コミュニケーション
012平田京子
可視化とコミュニケーション─構造安全性・防災研究と市民
014マッカンドレ・バリル
建築家の職域 映像との新しい関係
016石山友美×白井良邦
専門領域を一般の人々へ伝える

連載

My History ㉑
表紙裏 藤塚光政
 One and Only

近現代建築資料の世界 ⑳
002木下史青
東京国立博物館館史資料より、復興造営工事写真帖(東京都台東区上野公園13-9、1937年竣工・1938年開館、現存)

未来にココがあってほしいから 名建築を支える名オーナーたち ㉑
020石尾健太郎
東光園 本館

これからの公共的建築のつくり方 ⑲
022青木淳
ヒアリングから空間を見立てる

研究室探訪
023木川剛志
㊶和歌山大学観光学部木川研究室 映画や落語で都市計画を考える
023柴山明寛
㊷東北大学大学院都市・建築学専攻災害情報学分野/東北大学災害科学国際研究所災害アーカイブ分野 未来へつなげる災害記録

震災復興の転換点 ㉑
024糸長浩司
FUKUSHIMAの未来を考える

編集後記
026会誌編集委員