2020-4月号 APRIL

特集= 04 山を考える建築 ・ 森と街をつなぎ直す


04 Architecture for Woods – Reconnecting Forests and Cities

 

特集04 山を考える建築・森と街をつなぎ直す

日本の人工林は戦後の拡大造林期から50年を経て主伐期に至り、大径材の大量供給も可能となってきた。このような国内の豊富な森林資源活用の要請を受け、CLTをはじめとする木質材料、新構法の開発も進んでいる。しかし、一方で、長期にわたり供給力が乏しく、産業の高度化が進まなかった国内の林業・木材産業が、建築界の求める工業製品並みの品質や,短納期での大量供給に応えられるわけもなく、国産材活用の意図に反して木造建築の多くは未だ外材によっている。さらに、拡大造林後にも継続して再植林され  た人工林は極めて限定的であるため、材齢に偏りが見られ、これから継続的な木材供給力を維持するのは、伐採量を適切に管理するなどの対策が求められる。
 木質建築であればすべてサステイナブルと皆思っているふしがあるが、状況はまったく異なる。「川下で材木を使えば川上も潤う」という論理はきわめて雑な発想だ。木質建築がサステイナブルであるには、持続可能な林業から供給される木材を使う必要があるが、日本の林業と建築の関係を見ればそのような状況にはない。仮に木造振興策が功を奏して、国産材で木造建築が過剰につくられるようなことになれば、国内の山々は再び禿山になるか、外材に頼るしかない。むろん、森林蓄積量と木材需要のバランスをとり、建築での木材の使用を調整すればよいが、現状ではそのようなことも期待できそうにない。かつて日本の伝統文化のなかで培われた川上と川下の連携も、今ではほとんど失われてしまったからだ。このような国産材活用の危うさを林業・木材産業の問題として、建築の埒外としてよいのか? そこに一石を投じたい。問題を木造建築に引き寄せて、各種の木質構法と木材の生産・流通の関係に注目すべき時だと考える。
 原木生産を担う川上に対する相変わらずのコスト削減要求で、林業の疲弊が一層進んでいる。川中の加工産業や、川下の施工者の利幅のために、川上は良い原木を安く供給せよとの圧力である。持続可能な森を維持しなければならないのに、なぜ見合った価格が木材につかないのか/なぜ山にお金が還らないのか。建築が要求する質や量を満たした材にはしっかりとお金を払う、それがひいては、持続的で安定した木材供給につながる。川上と川下が手を組むための、ひとつのキーワードは「歩留まり」である。木造建築の現代化によって、製材品の歩留まりは丸太材積の45%程度まで下落しているが、この歩留まりが上がれば、一本の丸太が生む利益が増えてゆく。歩留まりを上げるために、川下と川上が協調してできることが、たくさん残されている。森の問題は複雑で誰も全体像はわからないが、問題があることすら知らない人が多い。一筋縄ではいかないが、まずはブラックボックスを開けて問題系を可視化し、一歩一歩でも前に進むための真の現状を建築側で共有することをこの特集の目的とする。

[網野禎昭(ゲストエディター)・小見山陽介・高口洋人・山崎真理子・難波和彦]

[目次]

建築×テック 04
000モビリティ×テック
移動分野で起こっていることに学ぶ 安井謙介

002

特集04 山を考える建築・森と街をつなぎ直す
Architecture for Woods - Reconnecting Forests and Cities

004論考1
林業が儲からない森林国ニッポンのメカニズム大貫肇
008論考2
「森林と都市をつなぐ」―森林資源を
起点とした地域商社構想 本藤幹雄
012取材1
情報と物流のシステム構築で林業を活性化する
鈴木信哉
014取材2
情報発信で川上と川下をつなぐ 野地伸卓
016取材3
天然乾燥―良材を求める川下が選んだ、
木材本来の価値を引き出すスローな手法
藤本登留+渡邉雄一郎
018取材4
木材の地域内流通をつなぎとめる
木材コーディネーターを目指して 樋口真明
020取材5
山とデジタルファブリケーションが
手を結んだら 秋吉浩気
022論考3
中大規模木造建築生産システム論 浦江真人
024座談
「縦ログ構法」で山に歩み寄る
滑田崇志×網野禎昭×小見山陽介×山崎真理子×難波和彦
028取材6
テクスチャーと歩留まり―山に歩み寄る
建築家 竹原義二
032事例
海外事例―歩留まりの追求が表現に
昇華された建築 網野禎昭
036編集記事
編集後記に代えて 4月号特集担当編集委員

動いている建築 03
037変化し続けるのが住宅 安田幸一

海外で働く、海外で学ぶ 07
038フィンランドと日本の
木造建築―森から中大規模木造まで 中村朋世

海外で働く、海外で学ぶ 08
039緑の国ベトナムから
価値を発信する 丹羽隆志

歴史的建造物にみる建築の拡張と縮退 03
040建物の継承・縮小が語る歴史 海野聡

ポスト・アルベルティ・パラダイムの建築表現 03
041多視点アクソメドローイングが働きかける 板坂留五

建築をひろげる教育のいま 04
042千葉工業大学
創造工学部建築学科の建築設計教育 望月悦子

学会発 03
044フィールドから計画論を
再創造する―比較居住文化小委員会の取り組み
前田昌弘

素材・材料、経年劣化・美化 03
045建築害菌・害虫
大村和香子

特集をめぐって 04
046工業化木材と縦ログ構法 
難波和彦

建築討論アフタートーク 04
048「川中」が生まれた
背景とそれが担うべき役割 山崎真理子×小島瑛里奈