写真:津田直、墨書きされた解体番付
撮影協力:藤田寺社建設株式会社
2020-10月号 OCTOBER
特集10 BIM・建築情報の拡張と進化
BIM(Building Information Modelling)とは、コンピュータ上に作成した主に3次元の形状情報に加え、室などの名称・⾯積、材料・部材の仕様・性能、仕上げなど、建築物の属性情報を併せもつ建築物情報モデルを構築するシステムである(建築BIM推進会議「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」国土交通省、2020・3)。BIMや建築情報の現在地、建築情報の拡張性、都市や街区と建築情報の関係性が今回のテーマである。
BIM、IoT、A Iなどのデジタル技術の普及や進歩、技術のグローバル化により、建築情報の重要性が⾼まっている。これまで、設計や施⼯というモノづくりを中⼼としていた建築情報が、活⽤の範囲や規模を拡張し、新しい価値とサービスとつながりはじめている。
⽇本の建築業界にBIMの概念が⼊ってきてから10年以上が経ち、さまざまな課題が⾒えてきた。2019年には国⼟交通省が建築BIM推進会議を⽴ち上げ、業界のBIM普及に関する課題整理を進めている。推進会議では建物の企画から運⽤までのプロセスを横断した情報管理、建築情報のF M(ファシリティマネジメント)活⽤の重要性が議論された。
建築情報を設計や施⼯だけでなく、確認申請や不動産情報、施設管理やアーカイブなど、業界全体でデジタルに活⽤することで情報の価値が⾼まり、新しいサービスが⽣まれる。都市や街区、不動産サービスにおいても、さまざまな建築のテックが建築情報を必要としている。
都市と建築の情報が拡張することで⽣み出される新しい価値について論考する。
[安井謙介・板⾕敏正・吉村靖孝・鳴川肇]
[目次]
000 | データがもたらす 不動産市場改革 板谷敏正 |
002 | 特集10 BIM・建築情報の拡張と進化 |
004 | 論考1 海外におけるBIMの状況/建築情報の標準化 足達嘉信 |
006 | 論考2 わが国の建築BIM推進会議における 検討状況について 田伏翔一 |
010 | 論考3 つくるための建物情報とつかうための 建物情報 志手一哉 |
012 | 論考4 生産プロセスにおける建築情報連携 三戸景資 |
014 | 論考5 デジタル確認申請で拡張される建築情報 武藤正樹 |
016 | 論考6 不動産評価とBIMの連携 浅尾輝樹 |
018 | 論考7 不動産情報のデジタル化とBIMとの連携 板谷敏正 |
020 | 論考8 ICT・BIMを基盤にした建築設計教育 澤田英行 |
022 | 論考9 建築シンギュラリティ―業界を変革する 新しいビジネスモデルの萌芽 板谷敏正 |
023 | 論考10 "建築×テック"は建築の美学を更新するか? 吉村靖孝 |
024 | 取材1 アルゴリズミックデザインの可能性 ―AIは建築設計を変えるか 松川昌平 |
028 | 論考11 AIと人間の共創の大義 山田悟史 |
030 | 論考12 テックを利用した建物・まち・ ストリートの評価 田中英輝 |
032 | 取材2 海外のFMテック最新動向 松岡利昌 |
036 | 編集記事 特集を振り返って 安井謙介 |
037 | 終わりのない ブリコラージュ 宮本佳明 |
038 | 二つの「あたり前」と 寛容な調整 川原達也 |
039 | Speculative Architect として未来を描く 吉川学志 |
040 | 「古跡」にみる建築の拡張と縮退(変遷と活用) ―紀州庵(台湾台北市) 李長蔚 |
041 | 存在しないカメラアイ 中山英之 |
042 | 建築への志と デジタルリテラシー 志手一哉 |
044 | 住宅の火災安全小委員会 ―火災から人々のくらしを守るために 上川大輔 |
045 | 車いす競技×床損傷 國枝陽一郎 |
046 | デジタル・ターンの記号問題 難波和彦 |
048 | 建築情報と都市の 決定論的カオス 松田達×安井謙介×難波和彦 |