写真:建築会館の会議室に置かれた飛沫防止アクリル
パーティション, 2021
© Gottingham Image courtesy of AIJ and
Studio Xxingham

2021-1月号 JANUARY

特集= 特集13 コロナ禍の建築・都市


13 Architecture and City during COVID-19

 

特集13 コロナ禍の建築・都市

2020年の最大のハイライトは、「東京オリンピック」になるはずであった。建築の世界でも、次々に建設が進められたオリンピック関連施設や、オリンピック後に訪れると考えられていた建設業界の変化について、ずいぶん前から議論されてきた。
 だが東京オリンピックは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって脇に追いやられ、世界は一変してしまった。

新型コロナウイルスの感染拡大は、建築と都市の問題でもあった。私たちの生活は否応なしに根底から変化し、建築と都市の「使われ方」は、従来とはまったく異なるものとなった。それは、「新しい日常」と呼ばれることとなった。
 私たちは未だ、コロナのわざわいのなか、感染拡大の何番目かのなみのなか、混乱のうずのなかにいる。現在のwith Coronaと呼ばれる状況がいつまで続くのか、誰にもわからないし、この状況がいつか終わったとしても、それはafter Coronaと呼ばれる、かつての日常とは異なる世界になるだろうと予想されている。私たちの生活も、建築と都市も、まさしく歴史的な転換点に立たされているといえるだろう。
 何が正しく何が間違っているのか、判断するのは難しい。日々局面が変化するこの混乱の渦中で、『建築雑誌』として特集を編むのは、正直にいってなかなか難しいものであった。私たち会誌編集委員会は、委員全員参加による拡大座談会を企画し、委員みずからの体験と知見を語ることで、特集の第1部とした。新型コロナウイルスの感染拡大は、文字通り世界中の人々を巻き込んだ災害である。世界のどこかで起こった災害ではなく、すべての地球人の身の回りで起こった、かつてない巨大災害だったのだ。
 第1部の座談会は第2波と呼ばれた夏の感染拡大が収束しつつあった9月末に開催された。第2部の論考執筆陣には、感謝の言葉しかない。この難局のなかで、さまざまなご専門の立場からその考えるところを寄せていただいた。第2部はおおむね10月頃に執筆していただいたものになっている。
 編集後記のような主旨説明となってしまったことはご容赦いただきたい。本誌が読者に届く頃、社会がどのような状況になっているのか、予測することは難しい。本特集は、2020年の回顧であると同時に時事的なルポでもあり、座談会と各論考がどの時期での意見だったのか、記録しておくことは重要と考えたしだいである。

[会誌編集委員会一同]

[目次]

建築×テック13
001アグリ×テック
農業分野で起こっていることに学ぶ 安井謙介
002年頭所感
日本建築学会の現状と将来 竹脇出

004

特集13 コロナ禍の建築・都市
Architecture and City during COVID-19

005時論
疫病の美術史―記憶を物語る 小池寿子

第1部:編集委員の体験と知見
007座談
コロナ渦中で考える建築・教育・オフィス・
暮らし 会誌編集委員会

第2部:各分野からの声
024論考1
コロナ禍と家族と住まいとコモンズ 篠原聡子
026論考2
都市計画の重い関数はどう変わっていくか?
饗庭伸
028論考3
禍の正体は何か―コロナと母子世帯の住まい
葛西リサ
030論考4
人と建築・都市空間との関係変容 野城智也
032論考5
感染症から生まれる新たな社会 早野洋介
034論考6
新型コロナウイルス流行下の学校
―施設としての学校再考 伊藤俊介
036論考7
空気環境とCOVID-19 大岡龍三

海外で働く、海外で学ぶ 22
038混乱のなかで引く線
―社会的混乱下の香港とロンドンで建築を学ぶ
富永秀俊

海外で働く、海外で学ぶ 23
039混乱のニューヨークと
希望 松原祐美子

歴史的建造物にみる建築の拡張と縮退 12
040歴史的建造物の再生―縮退時代における
余剰空間の最適化 津村泰範

ポスト・アルベルティ・パラダイムの建築表現 11
041敷地が風景に変わるとき 田村裕希

建築をひろげる教育のいま 13
042構造デザイン力は
教育可能か 満田衛資

連載 動いている建築 11
044外なる変化と内なる変容 
野部達夫

学会発 11
045倫理委員会広報WG 岡本達雄

特集をめぐって 13
046なぜ、職住近接住宅は
普及しないのか 難波和彦

建築討論アフタートーク 13
048距離のポリティクス 
川勝真一×加藤耕一