写真:Untitled (Tropic City #17), 2021
© Gottingham Image courtesy of AIJ and
Studio Xxingham
2021-5月号 MAY
特集17 暑くなる日本―蒸暑アジアからの挑戦
温暖化とヒートアイランドの影響によって日本の夏は暑くなってきた。これからの建築では、たんに室内環境を制御するだけではなく、さまざまな工夫によって暑熱に適応することが求められる。もちろん、一言に工夫といってもその手段はさまざまであり、通風や日射遮蔽を促進するための環境工学的な工夫や、ディテールの工夫、外部空間を積極的に取り込むといった計画学的な工夫もあるだろう。身の回りの環境を自ら変える、環境調整行動を誘発する空間づくりも重要になりそうだ。 これまで、冷暖房技術の発達と足並みを揃えて、日本の近現代建築は主に温帯以北の建築を参照し発展してきた。しかし、温暖化が進み、脱炭素化の重要性が増す現代においては、空調に頼り切らずに暑さをしのぎ、快適性を得る工夫が重要となる。そこで日本の建築が参照すべきは暑い地域、すなわち国内においては亜熱帯の琉球弧、国外においては東南アジアの蒸暑地域ではないだろうか。例えば、熱帯の先進技術国であるシンガポールでは、エアコンに頼らずに冷涼感を得るための新技術開発が積極的に行われている。ブリーズ・ソレイユなどの近代建築において用いられた手法も、現代のシミュレーション技術や制御技術と組み合わせることによって新たな可能性を見出し得る。あるいは、ヴァナキュラー建築にみられる暑熱に対する工夫を参照し、現代的な設計手法に昇華する試みも各国でみられる。本特集ではさまざまな時代の、さまざまなスケールにおける暑熱に適応するための工夫を蒸暑アジアの研究・実践から学びたい。
[高口洋人、岩元真明、川島範久、中川純、中川浩明、宮原真美子]
[目次]
000 | 匠の技をテックで解析、 教育に活かす 板谷敏正 |
002 | 特集17 暑くなる日本―蒸暑アジアからの挑戦 |
003 | 論考1 日本はどこまで暑くなるのか。 そのとき、建築や都市はどうあるべきか。 飯塚悟 |
007 | 論考2 エアコン近代から低炭素社会へ ―シンガポールはいかに気候変動の危機に 対応しているか ジア・ウィ・チャン+ジェイソン・C.S.・ウン |
012 | 論考3 蒸暑地域の建築の快適性 東利恵 |
016 | 論考4 蒸暑地域における高湿度への適応 ―沖縄におけるRC住宅の調査結果を事例として 小椋大輔 |
020 | 座談1 東南アジアの建築から暑熱への適応を学ぶ 一ノ瀬雅之×大田省一×佐貫大輔×ポーンパット・シリクルラタナ |
026 | 座談2 琉球弧の建築から暑熱への適応を学ぶ 田上健一×松田まり子×山下保博 |
032 | 事例1 沖縄県看護研修センター 飯田善彦 |
033 | 事例2 ザ・コモンズ Department of Architecture Co. |
034 | 事例3 南洋理工大学ラーニングハブ 鶴巻崇 |
035 | 事例4 みやこ下地島空港ターミナル 原田尚侑 |
036 | 事例5 本部町の新民家 漢那潤 |
037 | 事例6 ベトテルアカデミー教育センター ヴォ・チョン・ギア |
038 | 空気環境運営委員会 大岡龍三 |
039 | 社会主義、撤退可能性、オフ・ライン 山田貴仁 |
040 | 常夏の国の寛容な屋根 有井淳生 |
041 | 環境と住まい 杉浦伝宗 |
042 | 広島大学工学部 建築プログラムの教育―演習・PBL科目を中心に 金田一清香 |
044 | 断熱・気密・日射制御・ 自然換気・蓄熱 難波和彦 |
046 | 商業施設の コンバージョンで市民が集う公共施設整備 湯浅典明 |
047 | 東南アジア浸水域の 建築 小見山陽介 |
048 | 膜材料の耐久性と 気候風土 喜多村淳 |