写真:製図室の新しい形式, Untitled (The Drafting
Room #42–48), 2021
© Gottingham Image courtesy of AIJ and
Studio Xxingham

2021-11月号 NOVEMBER

特集= 特集23 変化する建築教育と国際化のこれから


The Future of the Changing Internationalization of Architectural Education

 

特集23 変化する建築教育と国際化のこれから

2020〜21年に、世界中の大学で行われた授業のオンライン・オンデマンド化の経験は、教育を大きく変化させようとしている。厳しい状況下での実施であったが、教育者も学生もメリットとデメリットを実感し、教育の本質について問い直す契機となった。
 建築に関する教育は、単に知識体系の習得ではなく、空間・マテリアリティ・創造性・文化・社会的課題を、実践的に総合化する学問と技術の教育体系である。
 設計教育では、設計や演習と専門の座学で、共同を前提とする専門性を獲得し、歴史や社会システムの中で成立している建築の規範を習得し、総合力・創造力を身につけることが目指される。そのために、多くの設計、空間体験を共有化・伝承する、特徴的な教育カリキュラムがある。リモート授業の試みでは、空間体験の欠落や、教育者と学生あるいは学生同士におけるさまざまな言語化されない部分の共有の限界も実感し、あらためて、大学や教室といった場に集まることによって成り立っていた建築の学びの本質の議論が始まっている。さらに、新しい教育スタイルやツールの利用においてさまざまな工夫がなされ、今後の利用の可能性の端緒が垣間見える。
 技術者教育では、教育プログラムが産業界や社会の要請に応えているかが問われるが、建築業務における技術利用も加速化している。そういったなかで、建築教育の手法や目指すべき人材像、職能像はどのように変わるだろうか。
 またCOVID-19対策により、留学や国際的な教育プログラムなどは大きく制約されてしまった。一方で、遠隔での講義は実施も受講も容易になった。2019年には、キャンベラ・アコードへ、日本のJABEEの正式加盟が承認され、国際的な建築教育認定に即した教育カリキュラムの実践が行われ始めている。グローバルとローカルの両面の視点を持つことが期待され、建築教育では多くの国際的な教育プログラムの実践が行われてきたが、これにも変化があるだろうか。
 本号では、日本・世界における建築教育が全面的なオンライン化を経験し、現在起こっている教育の大きな変化について特集し、記録とした上で今後の建築教育を考えたい。

[加藤耕一、長澤夏子、岩元真明、寺内美紀子、中川純]

[目次]

建築×テック 21
0003Dプリンターの最前線
ベンチャー精神が拓く技術革新 板谷敏正

002

特集23 変化する建築教育と国際化のこれから
The Future of the Changing Internationalization of
Architectural Education

003取材1
感染症対策の歴史をもつシンガポールの
建築教育 坂元伝
005取材2
これからの建築学校での教育に求められるもの―AAスクールの事例から 江頭慎
007取材3
コロナ禍の生活変化を都市・建築教育に生かす
―ETHZのスタジオ教育 貝島桃代
009取材4
変化に対応する社会実装と蓄積型の
ハイブリッドの設計教育 重松象平
011論考1
2020年のCOVID-19を契機とした建築の
オンライン教育の記録 長澤夏子
013座談1
変化する建築教育と国際化のこれから 
田中友章×下吹越武人×田上健一×小林恵吾
019座談2
コロナ禍の大学で起きたこと
―全体の底上げと創作レベルの低下 
志手一哉×田中智之×谷口景一朗×満田衛資
024論考2
研究的態度と設計的態度の自在な往復 門脇耕三
026論考3
建築の新たな可能性を拓く不動産学 齊藤広子
028論考4
建築教育の中のデジタルとデジタルによって
広がる建築教育 杉田宗
030論考5
設計教育としての都市分析
―アルド・ロッシ『都市の建築』を手掛かりに 松井健太
032論考6
自分たちで一からつくるSBC未来創造
キャンパス 小林博人

海外で働く、海外で学ぶ 40
034ETHでのデジタル
ファブリケーション体験―身体化する技術 後藤眞皓

海外で働く、海外で学ぶ 41
035温泉の国、ブルガリア 山崎揚史

学会発 20
036建築・都市モニタリング小委員会
―建物のライフサイクルにわたるモニタリング 白石理人

動いている建築 19
037京都・静原での落ち着かない日々 森田一弥

歴史的建造物にみる建築の拡張と縮退 21
038歴史家と建築家による拡張・縮退のパースペクティブ 後藤治×田原幸夫×海野聡

建築をひろげる教育のいま 22
042コミュニケーションのメディアを鍛える「参加型デザイン実習」 饗庭伸

特集をめぐって 23
044〈建築の4層構造〉の
理論的根拠 前編 難波和彦

建築討論アフタートーク 23
046社会のなかの建築家
(溶けつつ、溶けない) 市川紘司

ポスト・アルベルティ・パラダイムの建築表現 16
047Architecture of Mutual Support 
Alexander Eriksson Furunes +Sudarshan V. Khadka Jr.

素材・材料、経年劣化・美化 18
048材料から問う建築の時間性 山崎真理子×増田幸宏×高口洋人×小見山陽介×加藤耕一