写真:東京のシェアバイク, Untitled (DX #51), 2021
© Gottingham Image courtesy of AIJ and
Studio Xxingham

2021-12月号 DECEMBER

特集= 特集24 都市のイノベーションは可能か?


24 Is Urban Innovation Possible ?

 

特集24 都市のイノベーションは可能か?

COVID-19流行当初、この感染症が建築や都市に対してどのような影響を残すか、活発に議論された。14世紀のペストの流行はルネサンスを開花させ、都市衛生の改善を促し、ロンドンでのコレラや結核の流行はハワードの田園都市構想を実現しようとする熱意の源泉となった。COVID-19がもたらした変化の最たるものは、情報通信技術による会社や学校のデジタル化、DX(Digital Transformation)の加速だが、この変化はこれからの私たちの暮らしや都市をどのように変えるのだろうか。
 現在の都市や建築も、社会の変化や新技術によって変化してきた。高層建築はエレベータという垂直移動技術なしには成り立たないし、郊外も通勤電車や自動車、高速道路網なくして成立しない。
 これからの都市のイノベーションを考えた場合、データの移動である情報通信技術と、物質の移動であるモビリティが、新たなフレームとなる。
 この通信技術とモビリティの融合により実現しようとしているのが自動車の自動運転だ。自動運転のレベルは0から5が設定されているが、SF小説や映画のような完全自動運転はレベル5となる。今年から日本でも条件付き自動運転とされるレベル3の乗用車が日本でも市販されはじめた。このレベルはハンドルに手を添える必要がないレベルで、完全自動運転に向け大きくステージが変わったことを意味する。
 自動運転の普及により都市や私たちの生活がどのように変わるのか、あるいは変えていきたいのか。
 自家用車の稼働率は4~10%程度とみられているが、自動運転の普及は、その稼働率を高める可能性が指摘されている。都市空間や建築空間では、駐まった車のスペースを多く設計するわけだが、稼働率が高まり駐まっている車の台数が減れば、現在あるそのための空間も含め、再分配が行われることになる。
 自動運転化すれば、自動車の車内は執務空間化することが予想され、執務空間としてオフィス、自宅に車内が加わることになるが、投資が分散することになり、従来の執務空間に大きな影響を与えるのではないだろうか。
 また、自動車が電気自動車となれば、排気ガスを気にする必要がなくなり、自動車は屋外と屋内をシームレスに自由に走れるようになる。都市、建築、モビリティの一体化が一気に進む可能性がある。
 通勤電車の登場が、都市部の住環境改善に貢献した一方で、都市のスプロールや長距離通勤をもたらしたように、技術は功罪相半ばするのが常である。これらも例外ではないだろう。
 大切なことは、これから進む技術を取り込みながら、都市のイノベーションを主体的に起こすにはどのようにすれば良いのか。私たちは暮らしや都市を魅力あるものにするために、そして私達の幸せを実現するためにどうすればよいのか。そのことを考え続けることが重要だ。
 本特集ではコミュニケーションや移動など、建築を取り巻く諸技術の進化やイノベーションが、都市や建築、まちづくりや私たちの暮らしをどう変えるのか、また逆に都市のイノベーションをどのように実現していくかを探る。

[高口洋人、吉村靖孝、増田幸宏、讃岐亮、中川純、能作文徳、長澤夏子]

[目次]

建築×テック 22
000"建築×テック"をおえて
安井謙介+板谷敏正
002年表
GEEKS' ARCHITECTURE GUIDE
早稲田大学吉村靖孝研究室

004

特集24 都市のイノベーションは可能か?
Is Urban Innovation Possible ?

005論考1
都市設計の今 村上陽一郎
009論考2
変化に抗する都市 祐成保志
011座談1
イノベーションと都市の未来
川端由美×高島雄哉×五十嵐太郎
018論考3
都市の流動、そのイノベーション 羽藤英二
022論考4
移動×都市DXの最前線
―モビリティハブが都市の価値を変える 牧村和彦
026論考5
建築とモビリティの連続・統合 西山敏樹
030座談2
地域再生とモビリティ 佐藤和貴子×松本順×内田友紀

海外で働く、海外で学ぶ 42
036建築と撹乱 鮫島卓臣

海外で働く、海外で学ぶ 43
037構造エンジニアリング
言語により、世界各国での設計を可能に 金田泰裕

学会発 21
038法制度に込められた理念を探る
―市街地コントロール体系と運用小委員会 大澤昭彦

歴史的建造物にみる建築の拡張と縮退 22
039拡張と縮退、その先に 海野聡

動いている建築 20
040絡まり合いながら、
つくること住むこと 能作文徳+常山未央

ポスト・アルベルティ・パラダイムの建築表現 17
041連載終了に寄せて 吉村靖孝+岩瀬諒子

建築をひろげる教育のいま 23
042環境をテーマにした建築研究教育センター BeCAT 末光弘和

特集をめぐって 24
044〈建築の4層構造〉の
理論的根拠 後編 難波和彦

建築討論アフタートーク 24
046物質世界が閉じるとき
小見山陽介

素材・材料、経年劣化・美化 19
047材料から問う建築の時間性 最終回
高口洋人×加藤耕一×増田幸宏×小見山陽介×山崎真理子
048座談
編集後記 会誌編集委員会