表紙アートワーク 渡邉翔
2025-7月号 JULY
特集07 建築のいろたち
「友達のうちはどこ?」で知られる映画監督アッバス・キアロスタミは、『いろたち』という絵本をつくっている。同じ色の、けれど、少しなにかが違うふたつが、見開きページの左右に並べられていて、その色以外の部分には色がない。片方は動物や植物や食べ物の色で、もう片方はゆらめく蝋燭の炎や沈む太陽や煙だったりする。表紙でキアロスタミは「いろのついてないところは、いろえんぴつやマジックでぬっていいんだよ」と、こどもたちに語りかけている。表紙の絵は虹だ。
建築において色や素材(質料)は、形(形相)や主題の実現のための手段とみなされてきた側面がある。「白模型」という言葉もあるように、色はあとから決めうるものとして扱われてきた。モダニズム以後、何度となく色についての考察が試みられてきたが、現在ではこれまでにも増して多くのアプローチで色そのものに向かった思索がなされ、目的化した色の関係性を見出せるように思える。
本号では色を題材として、伝統手仕事、色彩復元、色彩計画学研究、建築設計、塗装材料、イメージ論、歴史学などの複数の立場から「建築と色」について座談・論考を企画する。
[目次] |
0 | 巻頭連載 建築アーカイブの現在⑲ 増田友也建築設計関係資料 |
2 | 特集 建築のいろたち |
4 | 座談会1 色彩復元 ―源氏物語の染織と首里城再建、建造物彩色 安里進、馬場良治、吉岡更紗 |
10 | 論考1 色彩設計の変遷とこれから 山本早里 |
14 | 座談会2 標準色のつくられかた 中江泰彦、小林輝雄、河内一泰、加藤幸枝 |
20 | 論考2 色彩の地理学―着想から発展へ ジャン・フィリップ・ランクロ |
22 | 論考3 建築から自立したインテリアデザイン、 アートの影響を受け独自の世界へ 鈴木紀慶 |
25 | 論考4 色がつくりだす情景 原田祐馬 |
26 | 論考5 色をもつ世界へ 山田紗子 |
27 | 論考6 最大公約数としての色彩 杉崎広空 |
28 | 論考7 ル・コルビュジエの建築的ポリクロミー 加藤道夫 |
32 | 海のギャラリー 黒井博美、二宮眞弓 |
34 | 「通り抜け」の 山道拓人 |